2026/02/01 19:57

昨年末、一通のご依頼をいただきました。
「Rig Packをベースに、カメラ用としてカスタムできないか」というご相談。
送られてきた内容は非常に詳しくまとめられていて、「これはカスタムというより新しい設計だな」というのが第一印象でした。
正直に言えば、自分の技術や設備では荷が重すぎる、と感じるほどの内容。
けれど、やり取りを重ねる中で色々な発想を話し合っていくうちに、作れるかどうかよりも「作ってみたい」という気持ちが勝っていきました。
8cmと10cmの判断
制作にあたっての大きな課題は剛性でした。
Rig Packを作った経験から、チェストパックのマチ幅は最大でも8cm以内、というのが自分なりの答えでした。
それ以上広げると前に沈み込んでしまう。
形を保つには複雑なコンプレッション構造が必要です。
しかし、ご要望は10cm。
さらに素材はDCF Hybrid。
硬く、加工に制約があるこの素材で、どうやってカメラを守るクッション性と、重さに負けない剛性を出すか。

視点を変えた一言
答えが出ない中で考え続けていた時、
お客様から「カメラ用のインサート(仕切り)を中に入れて使うのはどうでしょう?」というアイデアをいただきました。
その瞬間、頭がスッキリしました。
インサートを内蔵すれば、それがそのまま梁となりクッションになる。
はめ込むだけで形が自立し、剛性が生まれる。
お客様にとっても「インサートは市販品だから、ダメになっても交換できる」というメリットがありました。
外側の構造が成立すれば、すべてが解決する。
そこからは一気に進みました。

操作性を高めるためのディテール
サンプルは構造違いを2つ制作。
お選びいただいたのはカーブを取り入れたタイプ。(下の画像)
これは曲線によって歪みを減らし、少なからず剛性を高められます。
また、横長の形状を胸元で扱う際、生地が引っ張られてジッパーの開閉が重くなりがちです。
アクアガードとDCF Hybridという硬い素材同士でも、流れるように動くファスナー配置にしました。




そしてこの開口部は、Shaco Sackの構造を応用してます。
ファスナーを開けると、体側の蓋がスッと立ち上がり、中身がガバッと見渡せる。
また、出し入れでカメラが開口部に当たりにくくなります。

過程を楽しむ
先日ようやくお渡しでき、早々に雪山での感想とお写真をいただきました。
現場からの反応を読みながら、改めて良い経験をさせてもらったと感じています。
約1ヶ月と時間はかかりましたが、得たものは大きかったです。
何より、お客様と一緒に作っている感覚が、本当に良い経験でした。
対話しながら、一つひとつ仕様を決めていく。
この過程を楽しむスタイルは、アパレルをやっていた頃からたぶん変わっていません。
自分のモノづくりに、一番合っているのだと再確認できた一件でした。

お写真は許可をいただき掲載させていただきました。
ありがとうございました。

