All You Need Is Pull

“All you need is pull”

遊びに行くときに、とりあえず羽織るプルオーバー。
Tシャツの上にも、フーディの上にも、ダウンの上にも着られる。
そんな服が欲しくて作った。

いろんな場面で「とりあえずこれを着ておけばいい」と思える服を目指した。

遊びを横断して使えるウインドプル。

まず、軽い。

使っているのは、極細繊維を高密度に織った薄手のナイロンリップ。

しなやかで、サラッとしていて、かなり軽い。見た目もかなり良い。

だけど、伸びない・滑る・薄い生地のカーブパターンは仕立てが特に難しい。だからもっと難しいシルナイロンで作って練習していた。

薄いのに重ね着をすると頼りなさを感じにくい。

普段着、チャリ、釣りで使ってみても、この軽さと生地の触感はかなり気持ちいい。

一方で、ストレッチはない。

撥水性はあるが強くはない。

そして、透湿性を売りにした機能素材でもない。

薄く軽いことを優先した生地なので、そこはトレードオフ。

だから、生地だけで快適さを作ろうとはしていない。

適度な通気性と、ゆったりしたパターンで空気を逃がす。

ここは最初から意識していた。

伸びないなら、服を動かす。

ノンストレッチの生地だから、体の動きを生地の伸びだけで逃がすことはできない。

そこで、アームホールや身幅、袖のつながりを試しながら調整した。

昔の服には、ストレッチ素材がなくても動けるように、パターンそのもので可動域を作っているものがある。

古いフライトジャケットや、20年代のフリーダムスリーブなども参考にした。

最終的にはラグランスリーブで、実際に着て動いて、また直した。それを繰り返した。

袖は、手をグーに握ったときに隠れるくらい。

ドロップハンドルを握ったときにも、袖が短く感じない長さにしている。

ゆったりしている理由。

身幅を広くしたのも、単純にオーバーサイズにしたかったからではない。

インナーを選ばず着られること。

そして、服の中に空気が通ること。

この2つのため。

裾を軽く弾けば、服の中の空気も入れ替えやすい。

生地そのものがしなやかなので、身幅を広くしてもドレープが落ちて、必要以上に膨らまない。

昔のバルーンシルエットのようなゆったり感はありながら、野暮ったくならないラインになった。

このあたりは、生地とパターンが噛み合ったと思う。

裾は、調整しない。

ここもかなり試した。

ドローコードで裾を絞ることも試したけど、どうせ着たら絞るから、元からテンションをかけた。

こっちの方が手間なんだけど、最初からちょうどいい絞り感にしておけばいい。脱ぎ着も楽だし。

後ろは緩めのドロップテール。

テンションを位置で変えて、サイドから前にかけて自然にラインが流れるようにしている。

インナーの厚みにも対応できるようにしながら、裾は適度に収まる。そんなシルエットを目指した。

防風性は、必要なぶんだけ。

この服を単体で完結させようとは思わなかった。

むしろ、ミッドレイヤーとの組み合わせで使いたいと考えていた。

特にAlpha DirectやPower Gridのようなアクティブインサレーション。

こういう素材は動いていると快適だけど、風で寒く感じることがある。

これからの時期、特に釣りでも、日中は暑いくらいなのに、昼を過ぎると、風で肌寒くなることがある。

そんなときに、これを一枚羽織る。

完全に風を止める必要はなくて、必要なぶんだけ風を抑えて、インナーの性能を邪魔しない。

そのくらいがちょうどいいと思った。

フーディの上に着たときの首周りもしっかりボリュームが出る。ここは特に拘った。

最近の暖冬気味な冬なら、こういう重ね方もかなり使いやすいと思う。
化繊のインサレーションジャケットっぽくなるし。

余計なものは、付けない。

車の中やテントで吊るすために、首裏にコードループだけ付けた。

濡れたときにも、ここに引っ掛けておけばフードも前に垂れて乾かしやすい。

パッカブル用の袋は本体に付けていない。

パッカブル付きのウインドシェルはいくつか持っていて、自分はこの機能を使った試しがない。パッカブルパンツは便利で使うんだけど。

このPull自体が薄くて軽いので、使わないときはパンツの尻ポケットやファニーパック、フレームバッグに突っ込める。

袋を縫い付けるよりも、使いやすかった。
だから、必要な時だけ使えるようにStaff Sackは別で用意した。
他の荷物と一緒に突っ込むと擦れやスライダーの引っ掛けが心配になるから、生地保護として。

高機能なウインドシェルではない。

軽さとしなやか優先。

スペックを盛って万能にするのではなく、スペックを絞ったぶん、パターンと仕様とレイヤリングで補う。

そうすると、Tシャツの上からでも、フーディの上からでも、インサレーションの上からでも使える。

遊びを横断して使えるウインドプル。
All You Need Is Pull

そのくらいの距離感が、ちょうどいいんじゃないかな。

2026.9