Shaco Sack

シャコサックは、自分の使い方に合わせて作った。


「押し込む動き」から逆算して形を決めたストレージサック。

形の自立と、手の動きが素直に通る構造をつくりたかった。

● 内部は“ピラミッド状に積む”

衣類をひとまとめにするとき、

自然とこういう順番で重ねていく人が多いと思う:
例)

• 底:替えT

• その上:替えアンダー

• 一番上:替えソックス


大きい→小さい

この順番で積むと、内部は必ず“ピラミッド状”になる。


だったら最初から、“ピラミッドが収まる器” を作ればいい。

● 外形は“末広がり”

「中身がピラミッドなら、外形もピラミッド型が自然じゃない?」


でもシャコサックは

下が狭く、上に向かって広がる“末広がり”の形 をしている。


理由は単純で、

入口の可動域が最大になるから。

“手の動き”を軸に設計


ファスナーが山なりに湾曲し、

開けた瞬間に上部が大きく開く。


手を入れる最初の“間口”が広いほど、

上に積んだ小物が一気に見えて、取り出しやすくなる。


昔からパック類は「入口が広いほど使いやすい」とされてきたけど、

シャコサックは“押し込んで入れる”動作を前提にして、

ファスナーの山なりラインを外形に沿わせて設計した。

• ガバッと開く

• 手がそのまま入る

• 押し込む動きができる

この3点を確保できるのが、

内部ピラミッド×外形末広がり の組み合わせ。

「押し込む → 閉める → また開ける」がラクだから。

● 山なりファスナーは「手の仕草」から決めた

ファスナーはただの開閉ではなく、

“収納動作の一部”。


左手で袋を支え、右手でファスナーを引く(逆でも同じ)。

そのときに一番自然なのが、この山なりの曲線だと思った。

● 開口が自立する

「真っ直ぐでもいんじゃない?」

円弧の形状は、潰れにくいし、 “開いたまま立ち上がる状態” が保たれる。

アーチ橋っぽい。

この特性のおかげで、ガバッと開いた視認性と出し入れのしやすさが生まれている。

● 意味のあるアシンメトリー

見た目はシンプルでも、左右で役割が違う。

• 左側:テープループ

 片手で持つ、移動する時に使う。

• 右側:ファスナー脇の小さなコードループ

 閉める時に指を引っ掛けて滑らかに締められる“支点”。


形自体はシンメトリーでも、

動作に必要なポイントだけ非対称にしている。

これは飾りではなく、“用途の違いが形に出た”だけ。

● この形は衣類量を「固定」するためのもの

一般的なスタッフサックは容量を可変にする。

けど、持っていく衣類はいつも同じ。

• 替えT

• 替えソックス

• 替えアンダー(場合で変更)

この3点セット。

だったら、可変はいらないとおもった。

“この量なら収まる”、固定の発想で作った。

ミニマルな装備ほど、

可変より“迷わない形”の方が扱いやすいと思ったから。

● ストレージ以上、ギア未満のニュアンス

シャコサックは

「巾着の代わり」でも「防水スタッフサック」でもない。

整えなくても、形にハマる。

こういう“動作の気持ちよさ”に寄せた形。だから雑に適当に押し込んでも扱いやすかったりする。

主流のサック類と、このサックは流れが全く別の文脈。


機能を突き詰めていくうちに、形の解像度が勝手に上がっていったタイプの道具。

実験に近いけど、数年経っても個人的にはかなり気に入っている。

■ 想定した使い方

● 最低限の衣類サック

もともと、最低限の泊まり3点セット

• 替えT

• 替えソックス

• 替えアンダー

この 1セット をまとめるためのサック。

「とりあえずこのセットだけ押し込む」シーンで一番効く。

● 軽レイヤーまとめ


軽レイヤー(ネックゲイターやインナー手袋など)

をひとまとめにしておくと扱いやすい。
入れる量は泊まりセットとほぼ同じで、季節や行動内容で何を入れるかだけが変わる。

外ポケットに入れておけばラク。

■ まとめ

シャコサックは、

内部はピラミッド、外形は末広がり という、

相反する二つの形で成立している。

これは、

“押し込む → 開く → 閉じる” という手の動きを最優先した結果生まれた構造。

形が奇抜に見える理由は、

一般的なサックとは違うルートで形が決まっているから。


NUPDESIGNらしい 形に理由がある ものづくりが、このサックで最もはっきり出ていると思います。


シャコサックという名前は、ラインが“シャコ貝”に見えたから。

偶然の見た目だったけど、構造的にも力を散らして受ける感じが似ていて、しっくりきた。

NUPDESIGNのものづくりで

ずっとしっくりきている言葉があります。

“Form follows function”

形は機能の結果である。

シャコサックは、見た目ではなく

“動作” と “押し込む行為” を起点に設計したサック。

そのプロセスは、この言葉と強く重なる。

1)細部はすべて “動作” のためにある

シャコサックの各パーツは飾りではなく、全部理由がある。

• 末広がりの外形

• 山なりファスナー

• 左右非対称のループ

すべて “押し込む” を成立させるための細部。

2)カーブや角度の精度=使いやすさ

• ピラミッド状に積むために

• 末広な外形にするために

• 山なりな開口部にするために

• “動作”の支点を作るために

開口性・自立性・押し込みやすさのためのパターンを作った。

“形は機能の結果” をそのままやった構造。

3)見た目の偶然と、構造の必然が一致している

名前の由来は、ラインが“シャコ貝”に見えたこと。

偶然だったけど、

貝のように「力を逃しながら受ける」構造と近かった。

• 押し込む力を散らして受ける

• 中身がまとまり、破綻しない

• シェルのように保護する

自然の形状がヒントになる感じがしっくりきた。

4)既存の袋の常識を疑った形

スタッフサックの前提を全部疑った。

• スタッフサックは四角か円筒

• 入口はまっすぐ

• 可変容量が基本

• 上から詰める

この全部を否定して

「固定容量」と「押し込む行為」から形を作った。

5)説明して初めて伝わるタイプ

内部ピラミッド、外形末広、山なり開口、非対称の支点。

これらは言葉を添えて初めて腑に落ちる。

シャコサックは、NUPDESIGNの中でも

「形がそのまま機能になっている」 アイテム。

奇抜に見えても、

中身はすべて “押し込む動作” という機能の結果。

“Form follows function”

この言葉が一番しっくりくるプロダクトです。